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美容や健康だけじゃない、心の平穏をもたらすヨガの教え
ヨガと聞くと様々なポーズをイメージする方が多いかと思います。
また、ヨガのポーズを通して美容や健康を手に入れようと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ヨガのポーズは悟りへと至る過程の準備段階であり、美容や健康はヨガで得られる効果の一部でしかありません。
ヨガでは美容や健康を期待できることはもちろんですが、その効果をもっと享受したいと思いませんか?
そのためには、心へのアプローチ方法としてのヨガを知り、その方法を実践することが必要です。
ちょっとしたことで落ち込んだり、不安になったり、心は常にさまよっています。
ヨガではこういった心の状態を安定させるための方法を詳しく実践形式で教えてくれます。
悟りまで至らなくとも、日々の心の状態を少し良くするだけでも、人生をよりよく生きることができます。
この記事ではそんなヨガの教えである八支則(はっしそく)をガイドラインとしてご紹介していきます。
なにもすべてを実行する必要はなく、ちょっとした心構えを変えるだけでもあなたの人生を実りあるものに変えてくれることでしょう。
ヨガの起源はヴェールにつつまれている?
ヨガの起源は4500年前ほど前に遡ったインダス文明にあると言われています。
インダス文明は世界4大文明の中でもヴェールに包まれ、解明されていない部分が多い文明です。
その遺跡の中から、ヨガの坐法で瞑想する姿を刻んだ印章が発掘されています。
これが、ヨガの始まりと言われています。
しかし、古代文字の解読が不能であるため、ヨガを表したものなのかどうかは正確にはわかっていません。
もう少し時代を進めるとヨガの原型がはっきりとしてきます。
紀元前1500年頃インド侵攻を果たしたアーリア人によってヨガは発展してきたと言われています。
ヨガという言葉が初めて確認されたのが、「ウパニシャッド」という古典です。
ウパニシャッドは「近くに座す」という意味を持つ言葉で、秘儀・奥義といった意味になります。
その後ヨガを伝える正式な経典としてパタンジャリの編纂によって「ヨーガ・スートラ」が誕生しました。
ヨーガ・スートラはインド哲学の1つである、サーンキヤ哲学をベースとして書かれています。
ヨーガ・スートラでのヨガは、瞑想を中心とした呼吸法を用いて、悟りを目指ます。
そして、ヨガを深めるための8つの方法として「八支則」が紹介されています。
ヨガの悟りへと至る道の実践理論として八支則があるのです。
以下では8つの段階を詳しく見ていきましょう。
悟りへと導いてくれる八支則とは?
ヨガの八支則は
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禁戒(ヤマ)
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勧戒(ニヤマ)
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坐法(アーサナ)
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調気(プラーナーヤーマ)
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感覚制御(プラティアハーラ)
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集中(ダーラナ)
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瞑想(ディアーナ)
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三昧(サマーディ)
の8つの行を指しています。
禁戒(ヤマ)=やってはいけないこと
まず、禁戒(ヤマ)では日常生活で心の平安を保つために、人や社会に対してやってはいけない5つの行為を説いています。
非暴力(アヒムサ)
身体的な危害を加えるような暴力はもちろんのこと、暴力的な言葉なども入ります。
他人に向けられた暴力的な言動は巡り巡って自分に返ってきます。
他人に暴力的な言動をおこなっていれば、自分の心の平安を手に入れた状態とはほど遠い状態になってしまいます。
非暴力では他人に対してだけでなく、自分に対しても暴力的であってはならないとしています。
他人への暴力、自分への暴力、いずれも心の平安を乱してしまいます。
嘘をつかない(サティヤ)
自分の利益やエゴを守るために、嘘をついてはいけないとしています。
他人は嘘でだませるかもしれませんが、自分はその嘘を知っています。
嘘をついていれば、いつかばれるんじゃないかと、常日頃心配をすることになってしまいます。
また、1つの嘘をつくことで、嘘の上塗りをしなければならない状況に陥ってしまいます。
このような状況では心の平安も訪れません。
だからこそ、嘘をつかず誠実でいるために、自分に正直に生きることが、心の平安を保つためにもよいとされています。
不盗(アスティーヤ)
他人の物やお金を盗まないことはもちろんのこと、他人の時間、権利、利益なども含めて盗んではならないことを説いています。
例えば、待ち合わせ時間に遅れることで、他人の時間を無駄にしたり、自分が利益を得るために他人の権利を踏みにじったりなど、他人から盗んだものでは自分の心の平安を手に入れることはできません。
むしろ罪悪感などで、常に心が揺さぶられるような状態に陥ってしまいます。
禁欲(ブラフマチャリア)
性欲に限らずエネルギーの無駄使いをしてはならないことを説いています。
パートナー以外の異性と浮気をすれば、見つかる不安が常に心の中に渦巻きます。
不安があれば、何をしているときでも上の空になってしまい、心配することにエネルギーを注いでしまいます。
エネルギーを必要なところに集中させるためにも、性欲に代表されるような、利己的な欲を満たそうとすることは避けるよう説いています。
不貪(アパリグラハ)
度を越えた欲望に溺れてしまうと歯止めが利かず、次から次に求めてしまうことになりかねません。
おいしいものでも、食べ過ぎれば太ったり、健康を害してしまったりと、望まない形で自分に返ってきます。
このように、アパリグラハでは度を越えた欲望に基づいた行動を戒めています。
5つの戒めは自分の心を平安に保つための行動規範です。
ヤマが5つの禁戒、やってはいけないことであったのに対して、勧戒(ニヤマ)は心の平安を保つためにも、行った方が良いとされるものです。
次は勧戒(ニヤマ)について見ていきましょう。
勧戒(ニヤマ)=行った方がいいこと
勧戒(ニヤマ)ではどのようなことを推奨しているのでしょうか?
禁戒(ヤマ)と同様に勧戒(ニヤマ)も5つあるので、1つずつ見ていきましょう。
清浄(シャウチャ)
シャウチャは身体を清潔に保つことであり、外面的な清潔さはもちろんのこと、食事や生活習慣などによる身体の内部の汚れも清浄に保つことを説いています。
さらに、心も清浄さを保つために、嫉妬や嫌悪などのネガティブな感情や思考にとらわれないように心がけることも説かれています。
知足(サントーシャ)
今あるものに満足し、足るを知ることを説いています。
今ある状況を受け入れて、当たり前だと思っていることを見つめなおし、そこに感謝をします。
ついつい人は、当たり前に提供されているものに対する感謝を忘れてしまいます。
健康であることが当たり前だと思って、欲望のままに生きていれば、いつかは今ある健康も失ってしまうことになるでしょう。
失って初めて、いかに恵まれていたのかに気づきます。そうなる前に今あるものに満足し、感謝をすることを説いています。
苦行(タバス)
人が生きていくうえで、苦痛や試練をすべて避けていくことはできません。
しかし、そこから自身を成長させることはできます。
苦痛や試練を受け入れて、成長の糧にできる心の強さを育てることを説いています。
しかし、ただ単に自分を痛めつけるような意味のない苦痛は、アヒムサ(非暴力)に反するため、そこからは何も生まれません。
読誦(スヴァティアーヤ)
心を整えるために書物を読むことを説いています。
例えば、自分の心を良い方向に導いてくれる本を読んだり、心を豊かにしてくれる本を読んだりすることで、学ぶ姿勢を持つことをすすめています。
本から得た知識を実生活に活かすことで知恵に昇華させ、自分自身の成長につなげていくことができます。
神への祈念(イーシュワラ・プラニダーナ)
自分だけで生きているというおごりを持たず、神への祈念を通して、万物に対して感謝と尊敬の気持ちを抱きながら生きていくことの大切さを説いています。
また、自分ではどうすることもできないような状況を受け入れ身を委ねる、とも説かれています。
以上のような5つのニヤマを意識して行動することで、自分の成長の指針となります。
日常生活の行動規範となるヤマやニヤマを見てきました。
では次に実践としての「行」を見ていきましょう。
坐法(アーサナ)
本来のヨガは瞑想をするために、長く理想的な姿勢で座ることが必要でした。
現在では多くのアーサナがありますが、ヨガのポーズは瞑想をするための準備段階であると言えます。
ですので、アーサナは単純に言えば、快適で安定感のある姿勢をとるためのものです。
調気(プラーナヤーマ)
プラーナは宇宙に存在するエネルギーのことで、プラーナを身体に取り込むと、活動するためのエネルギーとなります。
プラーナヤーマでは、このプラーナの流れを整えるために、呼吸をコントロールします。
呼吸を通じてプラーナを取り入れているので、呼吸をコントロールすることにより、プラーナの流れを調整することができるのだと考えられています。
また理想的な呼吸をするためには理想的な姿勢、すなわちアーサナの実践が必要となるのです。
感覚制御(プラディアハーラ)
感覚をより繊細に感じて、外に向いている感覚を自分の内側に向けて、あるがままに自分を見つめます。
プラディアハーラは瞑想状態を深めていくための準備段階であり、感覚を我慢したり抑え込もうとしたりせず、あるがままを受け入れていきます。
集中(ダーラナ)
瞑想の最終段階である集中(ダーラナ)、瞑想(ディヤーナ)、三昧(サマーディ)は
意識の集中度合いを示し、ダーラナからディヤーナへ、ディヤーナからサマーディへと至ります。
これらははっきりとした区別のできない心理的な流れとなるため、総称して「統制(サンヤマ)」と呼ばれます。
ダーラナでは一点に意識を集中することで、雑念に動かされることのない心の状態を作り上げます。
例えばろうそくの炎などをイメージして、その中に集中することで意識の安定をはかります。
瞑想(ディヤーナ)
プラディアハーラで感覚を内側に向けて、内側に向けた感覚をダーラナで一点に集中させ、その集中が深まっていった状態がディヤーナです。
雑念がなくなり、安定した集中が行えるようになった無念無想の状態と言えます。
三昧(サマーディ)
集中が深まっていき、ヨガの最終目標とされる悟りの境地へと至ることをサマーディといいます。
「主客合一」と呼ばれる状態のことを言い、集中している自分とその対象に一体感を感じている状態のことです。
ヨガを行い、悟りの境地へと至る過程を八支則に沿って見てきました。
最後にヨガの中でも重要視されている八支則の4段階目である、プラーナヤーマについてもう少し詳細に見ていきましょう。
ヨガを行う上で重要な呼吸法
八支則を理解してもその実践となると、話は違ってきます。
瞑想をして、深い集中状態へ入る前に雑念で心がいっぱいになると、心はいろいろな方向へさまよってしまいます。
しかし、ヨガの先人たちは試行錯誤の末、心の乱れが呼吸の乱れとして、あらわれることに気づきました。
そして、呼吸を調整することで心を調整する術を確立したのです。それがヨガの呼吸法です。
上述したように、ヨガでは呼吸によってプラーナをコントロールします。
プラーナは宇宙に存在するあらゆるエネルギーのことを言い、プラーナが肉体に流ることで生命活動が維持されていると考えられています。
心の動きもまた、プラーナの働きにより生じる現象です。
つまり、心も身体もプラーナの働きによって活動ができているのです。
したがって、呼吸をコントロールし、プラーナの流れを調整することで、心の動きもまた調整可能だと考えられています。
その調整法としてプラーナヤーマという呼吸法が紹介されています。
呼吸法 プラーナヤーマ
プラーナヤーマは「プラーナ」と「アーヤーマ」の合成語で、「アーヤーマ」は伸ばす、止めるの意味を持つサンスクリット語です。
すなわち、プラーナの流れをゆっくり長く伸ばしていくことがプラーナヤーマでおこなわれる呼吸法ということができます。
プラーナヤーマを行うことで呼吸はゆっくりと静かなものになり、その結果、集中状態が訪れます。
このように、呼吸の状態をコントロールして心を制御していくことがプラーナヤーマのねらいと言えます。
ヨガにおいて呼吸はとても大切です。呼吸の理解が進めばポーズの上達や、瞑想の深まりを感じることができるかと思います。
まとめ
ヨガの八支則を中心に見てきました。
ヨガはポーズを行い、美容と健康を手に入れるためだけのものではないことが、おわかりいただけたと思います。
日常生活にヨガの考え方を取り入れることで、心の平安を感じながら暮らしていくことも可能です。
心の平安を感じるためにも、ヨガの八支則の考え方やポーズ、呼吸法はとても役に立ちます。また、日常生活の行動規範となるヤマ・ニヤマを実践するにあたり、自分の心と向き合うことも大切です。
ヤマ・ニヤマを頭の片隅に入れておき、日常生活のちょっとしたことを少しずつ改善しながら「行」を実践していくことで、その恩恵はとても大きなものとなって、あなたに返ってくることになります。
今日からヨガライフを始めてみませんか?