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腰椎すべり症について 治療方法や予防策をご紹介
腰椎すべり症とは、積み木のように連なる腰椎が、文字通り前方へ滑り出してしまい、様々な症状を引き起こす病気です。
腰椎すべり症は、腰椎分離症に続発する「腰椎分離すべり症」と、背骨や椎間板などの変性によって起こる「腰椎変性すべり症」に分けられます。
今回は、腰椎すべり症の症状や治療方法、予防策についてご紹介します。
腰椎分離すべり症について
背骨が疲労骨折などにより、椎体(背骨)部分と椎弓(背骨の突起部分)部分が分離してしまった状態を腰椎分離症と言います。
この腰椎分離症が放置され、状態が進行し、分離した部分の腰椎の安定性がなくなり、上下の骨にずれが生じることで発症するのが腰椎分離すべり症です。
スポーツ等を盛んに行う成長期の子どもやスポーツ選手に多く発症します。
腰椎変性すべり症について
加齢や長期間にわたる負荷などによって、腰椎の椎間板や関節・靭帯がゆるみ、椎間関節が変性し、腰椎が正常な位置からずれてしまいます。
それに伴って腰椎の安定性がなくなり、腰椎にずれが生じることで発症するのが腰椎変性すべり症です。
高齢者や女性ホルモンの影響や、女性ホルモンの減少により、骨などの組織の変性を起こしやすい閉経の頃(50~60歳くらい)の女性に多く発症します。
腰椎すべり症の症状について
初期の場合は、腰からお尻、太ももの後ろに痛みが現れ、進行すると神経圧迫により、足全体に痛みやしびれ等の神経症状が現れます。
また、歩いていると次第に腰部から足にかけてだるくなり、休み休みでなければ歩行ができない「間欠性跛行」が発生します。
腰椎すべり症の治療方法について
腰椎すべり症の治療法は、保存療法(手術せずに回復を待つ治療法)となります。
西洋医学の治療方法は、腰への負担を減らすコルセットや運動の制限を行い安静にし、薬剤の治療で経過をみます。
多くの場合、安静や薬剤の治療などで良くなりますが、痛みが強い場合は、ブロック注射を使用する場合もあります。
これらの治療で症状が落ち着いてくるようなら、腰への負担を減らしつつ、適切なストレッチや筋力訓練等のリハビリを行います。
状態が改善されず、足などが動かなくなったり、感覚が無くなってしまう麻痺と呼ばれる症状が現れる場合などは手術療法が検討されます。
症状の程度によって異なりが、「日常生活に非常に不自由を感じている場合」、「膀胱直腸障害が出てきている場合」、「痛みが増強している場合」、「間欠跛行で歩く距離が100m以内になってしまう場合」は、手術による対応が必要となります。
手術では分離部修復術、椎体間固定術、除圧術などを行います。
東洋医学の治療方法は、鍼灸治療や漢方薬を用い、腰や下半身の痛みと痺れを緩和させます。
患部に鍼を刺すことで、緊張した筋肉が緩み、神経が圧迫されにくくなり、漢方薬を併用することで、治療の効果が現れやすく、かつ効果が持続しやすくなります。
腰椎すべり症に効果的な鍼灸治療と漢方薬について
東洋医学と西洋医学では、視点や、病気に対するアプローチ方法が異なります。
安静や薬剤の治療やブロック注射でも症状の改善がみられない場合は、鍼灸治療や漢方薬を取り入れてみてはいかがでしょうか。
鍼灸治療や漢方薬には、神経の炎症を抑える効果があり、痛みの緩和が期待できます。
鍼治療 椎間関節部刺鍼
椎間関節部の知覚神経が密集している椎間関節周囲に鍼を刺して神経の炎症を抑えます。
鍼を刺してから10~15分程度置く「置鍼(ちしん)」に、低周波の電流を流すことで、神経根ブロックと同じ効果をえることができます。
鍼治療 仙腸関節調整刺鍼
仙腸関節の動きを良くするように鍼をします。
仙腸関節の緊張が取れると、各椎骨のつまりも取れて、神経の刺激が弱まります。
また腰の筋肉の緊張バランスも取れ、筋肉性の腰痛でも大変効果があります。
鍼治療の特徴は、症状によって異なりますが、治療直後から効果が実感できることです。
漢方薬 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
腰痛だけでなく、下半身の痛みやしびれなどに効果があります。
配合されている生薬
ジオウ、サンヤク、サンシュユ、ブクリョウ、タクシャ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツ、シャゼンシ
漢方薬 独活寄生丸(ドッカツキセイガン)
腰痛だけでなく、関節痛や下半身のしびれ・痛みなどに効果があります。
配合されている生薬
トウドッカツ、ボウフウ、ゴシツ、トチュウ、ケイヒ、サイシン、ジンギョウ、ソウキセイ、トウキ、シャクヤク、センキュウ、ジオウ
トウジン、ブクリョウ、カンゾウ、ショウキョウ
漢方薬 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)
腰痛だけでなく、関節痛や神経痛などに効果があります。
配合されている生薬
トウキ、センキュウ、シャクヤク、ジオウ、ソウジュツまたはビャクジュツ、ブクリョウ、トウニン、ゴシツ、チンピ、ボウイ、ボウフウ、リュウタン、ビャクシ、ショウキョウ、イレイセン、キョウカツ、カンゾウ
鍼灸治療や漢方薬等の東洋医学は、症状のある部分だけでなく、体全体のバランスを整えることで病気を治療します。
今出ている症状を一時的に治すのではなく、原因を根本的に治していく治療法で、予防医学の側面もあります。
腰椎すべり症の予防について
腰椎すべり症を経験した方や、腰痛の方は、インナーマッスルを鍛えることで痛みを軽減することができます。
腰椎すべり症を予防 腹横筋
腹横筋は、腰から腹部を覆うように、コルセットのような役割を果たしている筋肉です。
腹横筋を鍛えることで、腰椎の安定性を向上し、腰椎すべり症の予防や痛みの軽減が期待できます。
ポッコリおなかの解消や、くびれのあるウエストを作るにも良い筋肉です。
腹横筋の鍛え方 ドローイン
ドローインというトレーニング方法を聞いたことはありますか?
腹横筋の鍛え方としては、ドローインが最適です。
ドローインとは、「お腹をへこませたまま呼吸をする」というもので、もともとは腰痛など腰椎(背骨の腰の部分)まわりに問題を持つ患者さんに対して理学療法の現場で行われる運動療法です。
特別な技術は必要ありませんので、運動が苦手な人でも行うことができます。
ドローインのやり方
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お腹に空気を溜め込むイメージで息を大きく吸う
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(1)の時、姿勢は常にまっすぐをイメージして吸い、肩を上げないようにする
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限界まで吸った後、息を止めて酸素を体内に巡らせる
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お尻を引き締めて、体から空気が出ないよう意識する
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膨らませたお腹が凹むように、お腹から思いきり息を吐き出す
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(5)の時、おへそを中心に凹ませることで、より効果を高められます
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空気を完全に吐き出したら、凹ませた状態で30秒キープ
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その後、またゆっくりと息を吸っていく
目安は、5回 × 5セットです。
連続してトレーニングすることで、より効果を高められます。
ドローインのポイント
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お腹を凹ませた時に、腹部の筋肉を意識する
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30秒キープしている時は、胸で呼吸をしてお腹の凹みをキープ
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できるだけ連続してトレーニングを行う
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背中を絶対に丸めない
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リラックスさせた状態でトレーニングする
ドローイングで最も大切なコツは、リラックス状態をキープしてトレーニングすることです。
お風呂に入りながらなど体を休めるタイミングで行っていきましょう。
まとめ
腰椎すべり症は、悪性の病気ではありません。
痛みがひどい場合でも、多くの場合は、安静や薬剤の治療(内服薬の投与)、コルセットなどで良くなります。
そのまま症状が回復しない場合や症状をくり返す場合は、鍼灸治療や予防対策として腹横筋の鍛えるドローインを習慣づけてみてはいかがでしょうか。