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新型コロナウイルス なぜ若者は無症状の人が多いのか
なぜ、新型コロナウイルスに感染しても症状が出ない人がいるのでしょうか。
症状が出る方と無症状の方の違いや特徴についてはまだ調査段階ですが、1つ考えられているのが年齢です。
今までの感染者の傾向を見てみると、20歳未満は成人と比較して無症状である割合が高いことが判っています。
また、各国の調査をみても、10代の感染者の8割程が無症状であるのに対して、70歳以上となると7割程の方に症状が現れるとの報告があります。
このことから、年齢は大いに関係していることが考えられます。
今回は、なぜ若者に無症状者が多いのか、加齢による免疫機能の変化、免疫力を維持する為に必要なことについて解説します。
免疫とは
免疫の役割の一つは、外部から侵入してきた病原体などを認識して排除する防衛機能です。風邪を引くと熱や咳が出ます。
これは体温を上げて高熱に弱い病原菌を殺したり、咳やくしゃみという形で体外に排出しようとする免疫の働きによるものです。
また、新型コロナウイルスの予防接種をしておくと、もし感染しても軽くすむと言われるのは、ワクチンによってあらかじめ新型コロナウイルスに対する免疫(抗体)ができているからなのです。
では、免疫の種類や働きをさらに詳しく見ていきましょう。
自然免疫と獲得免疫
免疫には大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがあります。
自然免疫は生まれつき人間の体に備わっている免疫、一方で獲得免疫は一度体内に侵入した異物を記憶し、二度目以降に反応する後天的な免疫です。
それぞれがどのような仕組みで働いているのか、詳しく見ていきましょう。
自然免疫とは
自然免疫は生まれつき人間の体に備わっている免疫で、細菌やウイルスなどの異物を食べて除去する食細胞を中心に構成されています。
食細胞は自分たちと異なる分子や構造を認識する受容体を持っており、異物の処理・排除を促すタイプと細胞内で信号の伝達を起動するタイプに大別されます。
獲得免疫とは
獲得免疫とは、感染した病原体を記憶し、再度遭遇した時に効果的に排除できるようになる仕組みです。
自然免疫に比べると応答するまではやや時間が長くかかりますが、さまざまな病原体に反応する多様性を持っています。
一度感染した病原体に対して耐性がつき、感染・発症しにくくなったり、軽くすんだりするのは獲得免疫の働きによるものです。
免疫機能も、運動能力(体力)、視力、聴力といった能力などと同様に、年齢とともに衰えていきます。
この機能が低下すると、若い頃は簡単に治ってしまう病気でもなかなか回復しない、あるいは抗生物質を投与しても効き目が悪い、ということが起こります。
加齢による免疫機能の変化
免疫機能は加齢とともに低下しますが、若い頃と変わらない免疫機能を保つためには、免疫のしくみを理解することが必要です。
これまで行われた研究により、加齢によって低下する機能は、自然免疫系よりも獲得免疫系の方が著しいことがわかってきました。
獲得免疫の能力は、20代頃がピークであり、40代ではその半分に低下するとされています。
こうした免疫力の低下には加齢以外にも、ストレスや環境が影響を及ぼすといわれています。
免疫力を維持する為に必要なこと
人間の体を守る免疫の働きは、加齢によって徐々に低下していきます。
免疫細胞を作る分化機能が落ち、数が減るだけでなく、免疫細胞そのものの機能も衰えてくるので、感染症にかかりやすくなります。
また、不規則な生活習慣や偏った食事、睡眠不足、ストレスなども免疫力の低下につながりやすいので注意が必要です。
風邪を引きやすくなった、口内炎ができやすい、虫歯が増えたといった場合は、免疫力が低下している可能性があります。
心当たりのある人は生活習慣を見直してみるとよいでしょう。
ここでは免疫力を維持、高めるポイントを解説します。
腸内環境を整える
腸には全免疫細胞の約7割が存在していると言われています。
腸は口とつながっているため、さまざまな病原菌やウイルス、異物などが入ってきます。
そのため、異物を排除して健康を維持するために、多くの免疫細胞が必要です。
免疫細胞がその力を発揮するために重要なのが腸内環境です。
大腸から小腸にかけて、およそ1000種類、1000兆個以上もの細菌が存在し、腸内環境のバランスを整えています。
腸内細菌には、腸によい働きをする善玉菌の他に、有害物質を作り出す悪玉菌、優勢な方に味方する日和見菌の3種類があるのですが、免疫力を高めるにはこのうちの善玉菌を増やし、日和見菌を味方につけて、腸内環境をよい状態にすることが必要とされています。
動物性たんぱく質や脂質が多く、野菜類が少ないという偏った食生活は、腸内環境の乱れにつながります。
悪玉菌が増加することで免疫力の低下だけでなく、肥満や糖尿病、動脈硬化などの疾患リスクが高くなる恐れもあります。
そのため、腸内環境を整え免疫力アップを図るためにはヨーグルトや納豆、味噌など、乳酸菌などの善玉菌を含む発酵食品と、善玉菌のえさとなる食物繊維やオリゴ糖などを積極的に摂取しながら、栄養バランスのとれた適量の食事を心がけましょう。
体温を上げる
人間の体の機能が正常に働くための理想の体温は36.5度とされています。
しかし、現代人は生活の中で体を動かす機会が減っているためか、平熱が35度台という人が珍しくありません。
体温が1度下がるだけで、免疫の主役である白血球の働きは30%低下します。
しかし、反対に1度上がれば免疫力は一時的に5~6倍にもなると言われています。
真夏でも冷たいものを飲みすぎない、入浴時はしっかり湯船につかる、軽い運動を日課にするなど、体を冷やさない・温めることを心がけましょう。
さらにm運動不足は血行不良になりやすく、免疫機能の低下にもつながります。
適度な運動は体温を上げて血流を促進するため、毎日30分程度のウォーキングや筋トレなど、負担になりすぎない程度の運動を続けるとよいでしょう。
質のよい睡眠をとる
睡眠不足は健康の大敵です。
ある調査では、睡眠時間が7時間以下の人は、8時間以上の人に比べて3倍も風邪を引きやすいという結果が出ています。
また、T細胞が異物である抗原の情報を長期間記憶するには、適度な質のよい睡眠が不可欠とされています。
ストレスをためない
子供から大人、高齢者まで、ストレスを感じていない人はいないと言われるほど、高ストレス社会となった現代、ストレスは心身にさまざまな悪影響を与えます。
免疫力も例外ではなく、免疫が働くシステムも自律神経によってコントロールされています。
例えば、活動時には交感神経が優位となり顆粒球が増加する、休息時には副交感神経が優位となることでリンパ球の比率が高くなるといった具合です。
ストレスによってこのバランスが崩れると、免疫細胞の働きが低下し、病原菌や異物に対する抵抗力も弱くなるのです。
免疫力を高めるために、ストレスは上手に解消しましょう。
免疫力を高める漢方薬
漢方薬にも免疫力を維持、向上する薬が複数あります。
免疫力を高める 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
体力と気力を補い、元気をとりもどすのを助けてくれます。
冷え症で貧血気味、顔色が悪く、疲労衰弱がひどいとき、あるいは病中・病後、手術後などで体力が弱っているときに用います。
配合生薬
当帰(トウキ)川きゅう(センキュウ)芍薬(シャクヤク)地黄(ジオウ)蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)茯苓(ブクリョウ)人参(ニンジン)桂皮(ケイヒ)黄耆(オウギ)甘草(カンゾウ)
免疫力を高める 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
「人参」を主薬として、栄養状態の改善効果が期待できることから「人参養栄湯」と名づけられました。
病後や手術後、出産後の体力低下、寝汗、手足の冷え、貧血などの症状がある人に用いられます。
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)と同様に、体が弱っているときに体力などを回復させる「補剤」として広く使われていますが、「人参養栄湯」は咳などの呼吸器症状がある場合に向くとされます。
配合生薬
人参(ニンジン)黄耆(オウギ)当帰(トウキ)地黄(ジオウ)白朮(ビャクジュツ)茯苓(ブクリョウ)芍薬(シャクヤク)桂皮(ケイヒ)陳皮(チンピ)遠志(オンジ)五味子(ゴミシ)
甘草(カンゾウ)
免疫力を高める 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
胃腸の消化・吸収機能を整えて「気」を生み出し、病気に対する抵抗力を高める薬です。
元気を補う漢方薬の代表的処方であることから、「医王湯(イオウトウ)」ともいわれます。
配合生薬
人参(ニンジン)黄耆(オウギ)蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)柴胡(サイコ)当帰(トウキ)升麻(ショウマ)陳皮(チンピ)生姜(ショウキョウ)大棗(タイソウ)甘草(カンゾウ)
まとめ
免疫力が維持するには、規則的な食事・睡眠が基本ですが、漢方薬でさらに免疫力をつけてこの難局を乗り切っていきましょう。