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犬や猫の体調管理に有効な東洋医学(漢方医学)
犬や猫にも人間と同じように、東洋医学を使うことができるのか?なんていう疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、もちろん使えます。
この記事では東洋医学で使われる診察方法を解説して、病気の原因にもなる季節的な要因にも触れていきます。
言葉の話せない犬や猫の病気に気づいてあげるためにも、普段と違った行動や状態に注意を払ってあげることが大切です。
ですので、東洋医学の考え方を使って、早めに病気に気づいてあげることができれば、早めの治療をしてあげることができるのではないでしょうか。
犬や猫に東洋医学はつかえるの?
犬や猫も人間と同じ哺乳類であり、人間がかかる病気のほとんどに犬や猫もかかります。
中国では古くから獣医という制度があり、馬の治療に鍼や生薬などが使われていました。
また、現在の日本でも犬や猫のための生薬を使った食品や外用として使える生薬入りのケア用品もあり、鍼灸の治療なども行われています。
ですから、犬や猫にも東洋医学を取り入れた治療を行うことができます。
犬や猫は人間のように言葉を話すことができないので、自分の不調や不具合を言葉で伝えることができません。
そこで、犬や猫の状態から異変を把握できるようになれば、獣医にかかる際にも役に立つと思います。
まずは、東洋医学での四診による診断方法を見ていきましょう。
犬や猫の状態を見る 四診
四診とは4つの診察方法で、「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」のことです。
望診
犬や猫の見た目や動きなどを見て状態を観察する望診では、姿勢や動作、舌や分泌物・排泄物の色などから、身体内部の臓腑の病変を推測します。
中でも舌は多くの臓腑と関連しているため、状態もよく観察されます。
聞診
聴覚や嗅覚によって犬や猫の呼吸音や鳴き声、口臭、便のにおいなどから状態を把握します。
犬や猫の呼吸音などの状態を聞き、雑音がしないか、息切れはないかなどを確認し、体臭や分泌物、排せつ物などの臭いをかぐことで病状を把握します。
問診
犬や猫の痛みの部位や生活習慣、既往歴など様々な情報を集めます。問診では飼い主から様子を聞くことになります。
切診
直接犬や猫の身体に触れて、変化や状態を把握します。
切診には、「脈診(みゃくしん)」「按診(あんしん)」の2つがあり、脈診では脈をとり、強さ・早さ・浮き沈みなどから状態を把握します。
脈診
脈診には28種類ありますが、よく出る病脈は「浮脈(ふみゃく)」「沈脈(ちんみゃく)」「遅脈(ちみゃく)」「数脈(さくみゃく)」「虚脈(きょみゃく)」「実脈(じつみゃく)」「滑脈(かつみゃく)」「濇脈(しょくみゃく)」の8種類です。
按診
一方、按診では、手足、腹部、患部などに触れたり、軽く押したりすることで病状を把握します。
特に、腹部の状態を見ることを「腹診(ふくしん)」といい、診察の際に重視されています。
以上の四診によって得られた情報は、陰陽論、五行論、経絡学説などの理論を踏まえて分析を行い最終的な診断が行われます。
表裏・寒熱・虚実・陰陽の8つの区分
診断を行う際に病気の状態をとらえるために「表裏・寒熱・虚実・陰陽」の8つの区分を使用します。
表裏
表裏は病気の場所を指します。
外から侵入したウイルスなどが身体の表面部分にある段階を「表証」と言い、発病が急で、変化が早く病気の期間が短いという特徴があります。
一方で、ウイルスなどが身体の内部奥深くに入った場合を「裏証」と言い、通常困難な問題を引き起こすことになります。
寒熱
寒熱は冷たさや温かさのことで寒証の場合、寒がりで不活発、風邪をひきやすくもあります。
鼻水は透明で、嘔吐したものは無色無臭です。
尿の色は薄く無臭ですが、尿量は多い傾向にあります。便の色も薄く、水のような下痢をします。
熱証の場合、暑さに弱く、神経質で落ち着かず、興奮しやすい傾向があります。
鼻水は黄色から緑色で、嘔吐したものは黄色ががり、酸っぱい臭いなどの悪臭があります。
尿の色は濃く、臭いもきつくなりますが、尿量は少なくなります。便の色も濃く、臭いもきつい傾向にあります。
虚実
虚実では病状における正邪の盛衰を見ます。
実証は邪気が強くなり病気が引き起こされますが、正気も強いので抵抗力も強くなります。
一方で、虚証は正気が不足し、生命活動を維持するための重要な物質と考えられている「気・血・水」などが弱まっている状態で、体力が衰えていて正気の抵抗力も低下しています。
陰陽
最後の陰陽は表裏・寒熱・虚実を総括するもので、陰の属性を持つ裏証・虚証・寒証が陰証で、陽の属性を持つ表証・実証・熱証が陽証にあたります。
四診で得た情報をもとに、前述の8つの区分を使い診断を行います。
さらに、病気の原因のひとつとなる外因と呼ばれる6種類の気候変化も診断基準に加えられます。
6種類の気候変化 六気(ろっき)
外因は風・寒・暑・湿・燥・火があり、「六気(ろっき)」と呼ばれます。
気候の変化は通常であれば、万物を育む自然の恵みとなりますが、六気に過不足が生じたり、時期に反して発生した場合「六邪(ろくじゃ)」となり、身体に悪影響を及ぼすのです。
これを「外邪(がいじゃ)」と呼びます。
気候の変化は人間だけでなく、犬や猫にも影響を及すので、外邪の影響は人間や犬・猫の区別なく受けることになります。
「風邪(ふうじゃ)」
風邪は年間を通じてあらわれますが、春に多いと言われています。
目は風邪の影響を受けやすく、涙目や乾き目の原因になることもあります。
また、風邪は他の邪気と一緒に身体に侵入することが多い邪気です。
「寒邪(かんじゃ)」
寒邪は冬や気温が低い時期に多い病邪であり、その他にも雨にぬれたり、汗をかいて冷えたりすると寒邪の影響を受けやすくなります。
寒邪が臓器に侵入して脾胃を侵すと、お腹が冷え下痢などの症状を起こしやすくなります。
「湿邪(しつじゃ)」
湿邪は梅雨や夏の時期、湿気の多い環境であらわれやすくなります。
湿邪は脾を侵しやすいので、食欲不振、消化不良を起こしやすく、脾が弱ることで体内の水分である水(津液)が滞り、むくみが出ることもあります。
「燥邪(そうじゃ)」
燥邪は乾燥の強い邪気で、秋から冬にあらわれやすく、潤いを好む肺に燥邪が侵入することでトラブルが発生しやすくなります。
乾いた空咳や喘息などの症状が発生することもあります。
「暑邪(しょじゃ)」
暑邪は夏の盛りに発生します。
人ならたくさん汗をかいて熱を発散させますが、犬や猫は汗をかく分泌腺が全身にはありません。犬は口を大きく開けて呼吸をすることで、体温調節をします。
また、猫は暑さに強く、動かないことで、体温が上がるのを抑えたり、毛づくろいをすることで身体を湿らせて体温調節をしています。
暑邪に侵入されることで発熱や脱水、脱力感などの症状が見られることになるのです。また、暑邪は湿邪を伴うことが多いとされています。
「火邪(かじゃ)」
火邪は季節性がなく、他の邪気によって熱化したもので、高熱、全身の乾燥などの症状が出ます。
このように、火邪以外は季節の変化に伴い邪気の影響が出るので、その季節ごとの対策も必要です。
まとめ
東洋医学での診察方法を解説してきました。
四診で情報を集め、8つの区分で病気の状態を把握し、さらに病気の原因にもなる六邪についても見てきました。
犬や猫は自分自身で病気を取り除くことが難しい場合に、私たちに何かしらのサインを送ってくれます。
ですので、そうしたサインを見逃さず、小さな変化に気づいてあげることで病気に対する早めの治療や環境の変化に対する対策をしてあげられます。
言葉の話せない犬や猫の病気を把握するためにも、東洋医学の知識を活用してみてはいかがでしょうか。