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疲れやだるさを解消する漢方薬
疲れやだるさは不快感として感じるものの、放っておくことが多い症状の一つですよね。
しかし、なかなか改善されない疲れやだるさは肉体的にも、精神的にも影響が出てきます。
疲れやだるさを感じながら日常生活を送ることは、快適とは程遠い生活になってしまいます。
そこで、この記事では疲れやだるさについて漢方医学から見る考え方を解説します。
そして、疲れやだるさを改善するための漢方薬についてもご紹介していきます。
まずは、疲れやだるさについて詳しく見ていきましょう。
疲れやだるさとは
しっかり寝ているのに翌日も疲れが取れない、常にだるさを感じる、身体が重い、頭痛がする、などの疲れやだるさからくる、肉体的な症状は今までにも多くの場面で経験されてきたのではないでしょうか。
また、その他にも、脱力感があり、何もやる気が起きない、悲観的に考えてしまう、などの精神的な症状も引き起こすこともあります。
これらの主な原因としてあげられるのが、「睡眠不足」「ストレス」「栄養不足」「病気」などです。
西洋医学では、現代の疲れやだるさの主な原因はストレスと考えられ、ストレスの主な要因として脳の疲れをあげています。
脳に疲れが溜まることで、前述したような肉体的、精神的な症状を引き起こすと考えられています。
また、「疲れ」「痛み」「発熱」は身体からの3大アラームとも言われ、健康を維持するためにも必要な休息を促すシグナルです。
ですから、疲れやだるさの対策として最も必要とされるのが、睡眠、休息、などです。
ただし、休息をとっても、なかなか回復が感じられないときは「病気」が原因の場合もあるので、病院を受診してみることをおすすめします。
次は漢方医学の観点から疲れやだるさの原因を探っていきましょう。
漢方医学から見る疲れやだるさの原因
漢方医学では身体を構成する「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」が生命活動を維持するために必要な物質と考えられています。
気は生命活動の根本エネルギーで、血は栄養を各組織に供給し、水は血以外のすべての体液のことを言います。
漢方医学で疲労は気・血・水の不調和が原因と考えられています。
病は気からと言うように、気の不足などが生じることで身体に影響が出てきます。
また、気の変調により、血や水にも不調をもたらします。
気の不足「気虚(ききょ)」について
気の不足のことを「気虚(ききょ)」と言い、その症状として、倦怠感、食欲不振、手足の冷えなどがあります。
気虚の原因として、脾胃(ひい)の機能低下により気の生成が不足したこと、ストレスなどで気が過剰に消耗されたことなどが考えられます。
脾(ひ)は摂取した食べ物や飲み物から気・血・水を生み出す働きを担っていて、西洋医学でいう「脾臓」とは働きが異なります。
また、脾胃の機能低下が血の不調をもたらし、血虚(けっきょ)を引き起こすこともあります。
その症状として、目のかすみや乾き、肌の乾燥、不眠などがあげられます。
では、このような気・血・水の不調和が原因として考えられる、疲れやだるさによる肉体的、精神的症状を改善するためには、どのような漢方薬を使えばいいのでしょうか。
次は、疲れやだるさの改善などに使われる漢方薬について見ていきましょう。
疲労やだるさに使用される漢方薬
漢方医学では疲れやだるさの原因は、気・血・水の不調であると考えていることを解説してきました。
疲れやだるさは主に、気の不足が原因と考えられ、気の不足を補う必要があります。
気虚、血虚を改善するための漢方薬
気を補う代表的な漢方薬に「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」があります。
補中益気湯は気を補う「補気薬(ほきやく)」として、「気力がでない」「食欲が出ない」などの症状に対して使われます。
補中益気湯のほかも「四君子湯(しくんしとう)」「六君子湯(りっくんしとう)」などが補気薬として使われます。
補中益気湯の「補中」は消化器を補助することを意味し、「黄耆(おうぎ)」を中心とした消化器機能を活発化させる生薬構成になっています。
また、補中益気湯は消化器機能の増強をはかり、食欲の低下、四肢のだるさ、軟便などを改善します。
消化器機能を増強する処方は呼吸器機能回復の効能も持つので、呼吸器機能低下によっておこる息苦しさなどにも適応します。
また、補気薬に使われる主な生薬には「人参(にんじん)」「黄耆(おうぎ)」「山薬(さんやく)」「白朮(びゃくじゅつ)」「茯苓(ぶくりょう)」「甘草(かんぞう)」などがあります。
これらの生薬は五性(ごせい)では、平性から温性に分類されるもので、身体を温める作用があります。
五味(ごみ)による分類では、甘味に属し、脾を補い、消化を促します。
五性とは身体を冷やすか温めるかで分類し、五味とは生薬の味が作用と関連していることから用いられた分類法です。
気に関係している漢方処方には補気薬の他に理気薬(りきやく)というものがあります。
理気薬は気の働きを改善し「気滞(きたい)」による張りや痛みに作用します。
気滞とは気の流れが停滞している状態です。
次に、気虚に加えて、目のかすみや乾き、肌の乾燥、不眠などの血虚の症状も伴うときは「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」が用いられます。
十全大補湯は気を補う「四君子湯(しくんしとう)」と血を補う「四物湯(しもつとう)」をベースとした気血の双方を補う生薬構成になっています。
補血薬(ほけつやく)に使われる主な生薬には「熟地黄(じゅくじおう)」「当帰(とうき)」「何首烏(かしゅう)」「阿膠(あきょう)」「白芍(びゃくしゃく)」「竜眼肉(りゅうがんにく)」などがあります。
補血薬には五性では温性、五味では甘味に分類される生薬が多く用いられます。
以上、気虚、血虚を改善するための漢方薬処方について見てきました。
ところで、漢方薬と食事は密接な関係にあります。なぜなら、漢方薬は食中毒などの治療法として発展してきたと言われるほど、食事と関係しているからです。
また、中国では薬は食事から生まれるものとして、「薬食同源(やくしょくどうげん)」と言われています。つまり、食べ物を摂取することは、薬を服用することと同じくらい大切なことと考えられています。
ですから、不調の改善のためには、食事の見直しもあわせて行うことが大切です。
最後に疲れやだるさを改善するための食事について見ておきましょう。
疲れやだるさを改善する食事
薬食同源とは「命は食にあり、食誤れば病にいたり、食正しければ病自ずと癒える」と言われるもので、食べること、食べるものの重要性を説いています。
食事は毎日とるものなので、「命は食にあり」と言われることにも納得できますし、食事の重要性は常日頃から誰もが感じていることではないでしょうか。
そこで、食事から疲れやだるさの改善をはかるために、毎日の食事の中で取り入れたい食材についていくつか見ていきましょう。
疲れやだるさの原因でもある、気虚を改善する食材をいくつかご紹介していきます。
餅米(もちごめ)
餅米は五性では温性、五味では甘味に分類され、脾胃の消化機能を円滑にし、気を補い、身体を温めてくれます。
そのため、慢性的な疲労解消に役立ちます。また、冷え性の方や冷えからくる下痢などに効果的とされています。
大豆
大豆は五性では平性、五味では甘性に分類され、脾の消化機能を円滑にし、気を補うことで疲労回復を促してくれます。
大豆に含まれているイソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをするため、更年期障害などの症状も緩和する作用が期待されます。
カボチャ
カボチャは五性では温性、五味では甘性に分類され、脾胃の働きを促し、身体を温めてくれます。
疲労回復、食欲増進に効果があり、肌あれや冷え性の改善作用もあります。
まとめ
疲れやだるさは軽度であれば、休息をとることで改善されることがほとんどです。
しかし、なかなか解消されない疲れやだるさは、漢方医学では気・血・水の不調和からくるとされています。
疲れやだるさの原因は主に気虚、気の不足からくると考えられ、気を補うための補気薬が使われます。
その中でも代表的な漢方薬として、補中益気湯をご紹介しました。そして、気虚が長引けば血虚の状態も招いてしまうこともあります。この場合は十全大補湯が使われ気血双方を補うことで改善を促します。
また、薬食同源と言われ、食事は健康を維持していくためにも非常に重要視されています。
漢方薬の使用に加えて、食事の見直しもおこなうことで、疲れやだるさの改善を実感できるのではないでしょうか。