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東洋医学から学ぶ 健康増進に役立てる「あん摩、マッサージ、指圧」とは

あん摩マッサージ指圧

 

お腹が痛い時に手を当ててみたり、肩が凝っているときには叩いてみたり、具合の悪そうな人がいるときは背中をさすってあげてみたり、私たちは、日常的に無意識のうちに「応急的な手当て」をおこなっています。

 

人は意識しなくても患部に手を当て不調が緩和されることを経験から学んでいます。

 

このような患部を手でさする「応急的な手当て」は手技療法の原型であり、原始的な医療行為です。

原始的な医療行為が長い時を経て体系化され「あん摩、マッサージ、指圧」という手技療法として確立されました。

 

今回はあん摩、マッサージ、指圧の手技療法と併せて東洋医学の考え方についてご紹介します。

 

 

 

東洋医学とは

 

東洋医学について

 

東洋医学はアジア地域で生まれた伝統医学です。

伝統医学とは地域固有の経験、知識、技能が集約されたものです。

 

伝統医学は健康を維持し、身体的・精神的な不調を予防・診断・治療する手段として利用されてきました。

 

インドのアーユルヴェーダ、イスラムやギリシャのユナニなど、アジア地域でも広く存在しています。

 

日本で言う東洋医学とは東アジアにおける伝統医学、中でも中国伝統医学のことを指す場合が多いようです。

 

古代中国で発祥した伝統医学は、伝統医学の中でも漢方薬、鍼灸、あん摩など様々な治療法を備えています。

 

 

 

あん摩、マッサージ、指圧とは

 

東洋医学マッサージ

 

あん摩・マッサージ・指圧のそれぞれ起源は違い、あん摩は中国伝統医学をもとに発展してきました。

 

マッサージはフランスの理学療法の1つとして伝えられ、指圧は抑按調摩(よくあんちょうま)、柔道活法などを組み合わせて日本独自に発展してきたものと言われています。

 

あん摩は、「押す・もむ・さする・なでる・たたく」といった手技を組み合わせて治療をおこないます。

衣服の上から遠心性(心臓の近くから遠くへ)に施術を行います。

 

マッサージは、直接肌の上から施術を行うので、オイルやパウダーを使います。

あん摩とは逆に求心性(末端から心臓へ)に施術を行い血液やリンパ液の循環をよくして新陳代謝を促します。

 

指圧は、日本独自に発展した手技療法で、親指や手のひらを使いツボを刺激します。

 

このように、それぞれの起源は違いますが、手や指のみを使って施術するという共通点もあります。

まずは、施術による効果とその作用についてご紹介します。

 

 

 

あん摩、マッサージ、指圧の効果とその作用とは

 

あん摩、マッサージ、指圧の治療効果は身体の機能異常を整え、健康を増進させることにあります。

また、以下のような5種類の作用があります。

 

 

興奮作用

 

不調により機能低下をおこしている神経や、筋肉に対して刺激を与え興奮性を高め、機能を増強して回復をはかります。

弱い刺激で短時間行うのが効果的です。

運動麻痺や知覚鈍麻などに適応します。

 

 

鎮静作用

 

機能低下とは逆で、不調により機能亢進状態にある神経や筋肉に対して刺激を与え、神経や筋肉の興奮を抑制します。

この場合は強い刺激で長時間行います。

神経痛、筋肉痛、知覚過敏、筋肉の凝りなどに適応します。

 

 

反射作用

 

疾病部位から離れた場所に施術し、身体の反射機能を利用します。

反射機能により、神経や筋肉、内臓などを刺激することで、身体の内部調整をはかります。

内臓の異常や血管・運動神経系の異常とそれに伴う関連痛などに適応します。

 

 

誘導作用

 

怪我や腫れなどにより直接患部に施術できないときは、離れた部分に施術し、血液や滲出液(しんしゅつえき)を誘導して排出を促します。

血液や滲出液を排出することで患部の症状の改善をはかります。

打撲、捻挫、むくみなどに適応します。

 

 

矯正作用

 

関節の拘縮により、関節の可動域が制限されている場合に、その周辺の滲出物(しんしゅつぶつ)の吸収を促したり、関節周囲の筋などの癒着をはがして動きをよくしたりします。

捻挫や骨折後に残る関節拘縮などに適応します。

 

 

以上、施術による効果とその作用を見てきました。

では次に、施術する際の基本的な手技についてご紹介します。

 

 

 

あん摩の基本手技について

 

マッサージ

 

あん摩の基本手技として以下のようなものがありますが、曲手はあん摩独自のもので、あまりお目にかかることのない施術といえます。

 

 

軽擦法

 

手や指を施術する部位にあて、軽い力で皮膚面をさすります。

軽い軽擦は知覚神経による反射作用を起こし、爽快な感覚を起こさせます。

 

強い軽擦法は血液循環を良くして新陳代謝を盛んにします。

「軽擦法に始まり、軽擦法で終わる」と言われるくらい基本的な手技と言えます。

 

 

揉捏法(じゅうねつほう)

 

揉捏の「揉」はもむ、「捏」はこねるという意味で、筋肉などをつかんだり、もんだりします。

つかんだり、もんだりすることで、血液循環を改善し老廃物の排出が促されます。

 

例えば、手掌揉捏という手技があります。

この手技では掌を施術部位にあて円を描くように手を動かします。

手掌揉捏を腹部に行えば、胃腸の蠕動運動を高め便通が促進されます。

また、手掌揉捏は背中や大腿部などの大きな筋肉に対して行われます。

 

 

叩打法(こうだほう)

 

手指を使いリズミカルに対象部位をたたきます。

断続的な刺激が伝わり神経や筋肉を興奮させ血流の改善をはかります。

 

叩打法には、手の指をつかったり、手を握って作ったこぶしをつかったりと様々な手の使い方があります。

 

 

圧迫法

 

圧迫法は手掌や指を使って対象部位を押したり、圧迫したりします。

腕力だけに頼らず施術者の体重をかけて圧迫します。

 

圧迫法は痛みや痙攣を抑制し、興奮状態にある神経を鎮静化させるなどの効果があります。

 

 

振せん法

 

手や指を使って対象部位に触れて筋肉を細かく震わせます。

断続的に振動刺激を与えることで、神経や筋肉の興奮性を高め、快い感覚を与えます。圧迫した状態で振動刺激をあたえたり、引っ張りながら振動刺激を与えたりします。

 

振せん法では対象部位によって施術方法を使い分け、身体の広い範囲で用いられます。

 

 

曲手

叩打法や振せん法の変形といえるもので、あん摩独自の手技です。

曲手では独特な手の使い方がされ、以下のものがあります。

 

車手

指頭が体表に接したタイミングで指を曲げてローラーのように転がす手技です。

主に背中・腰、肩などに用いられます。

 

突手

指先で叩くようにして、タイミングをみはからい、指を曲げ四指の背面関節で突くようにおこなわれる手技です。

 

横手(鳴骨の術)

開いた指の小指側を体表にあて手根を前後に素早く動かし、もむようにおこないます。

この時関節がリズミカルな音を立てるため、鳴骨の術との異名もあります。

 

柳手(ばら手)

手首から指先までの関節全体を弛緩させ、対象部位を軽やかに叩く手技です。

 

袋打の術

両手を軽く握ることにより空気を含ませ、手背で叩打します。

対象部位を叩いたときに音が鳴るように行います。

叩打法と似た手技と言えるでしょう。

 

運動法

患者の関節を施術者が動かす手技です。

各関節の運動方向や可動域に注意しながら動かし、関節内の血行を改善し、関節滑液の分泌を促します。

関節運動を円滑にすることで、関節拘縮の予防となります。

 

運動法には他動運動法、自動運動法、抵抗運動法、伸縮運動法があり、患者の筋力によって使い分けられます。

 

 

あん摩における手技をご紹介しました。

次はマッサージにおける手技についてご紹介します。

 

 

 

マッサージの基本手技について

 

あん摩同様にマッサージにも軽擦法、揉捏法、叩打法、振せん法、圧迫法があります。

しかし、軽擦はもともとは、強擦に対比するマッサージ用語であり、あん摩の言葉ではありません。

そこで、マッサージではあん摩にはない基本手技である強擦法の解説をしていきます。

 

 

強擦法

 

軽擦法と揉捏法を組み合わせた手技で、按捏法(あんねつほう)とも呼ばれます。

やや強めの刺激を与えることで、筋肉内に貯まった血液などを粉砕し、身体に吸収されやすくします。

 

強擦法を用いることで、瘢痕(はんこ)や関節の癒着を剥離します。

 

マッサージの手技については補足として解説しました。

次は日本独自に発展してきた指圧についてご紹介します。

 

 

 

指圧とは

 

指圧東洋医学

 

指圧とは、手や指を使って全身にあるツボを刺激し、本来人間の身体に備わっている自然治癒力の働きを促進し、不調の改善をはかる日本独自の手技療法です。

指圧療法の原型は大正9年頃に浪越徳治郎氏によって確立されたと言われています。

 

浪越氏はわずか7歳の時に多発性関節リウマチから母を救いたい一心で母指と手掌による

押圧中心の手技を独自に会得したと言われています。

 

「指圧の心は母心。押せば命の泉沸く」とは、そんな浪越氏が指圧について語ったときの言葉です。

 

浪越氏が世界各国の著名人を治療したことにより、指圧は「SHIASTU」と訳され全世界に普及しました。

 

浪越氏によって確立された指圧は、現在では様々な流派があります。

また、本来指圧のツボは中国伝来の経絡経穴(鍼灸のツボ)とは異なりますが、臨床結果において両者のツボはほぼ一致することが多いため、指圧治療に経絡理論が取り入れられています。

 

経絡理論を取り入れた指圧を経絡指圧と総称しています。

また、ツボ指圧においても経絡、経穴が取り入れられています。

そこで、まずは経絡についてもおおまかに解説していきます。

 

 

経絡とは

 

経絡とは、東洋医学で言われる、気血水の流れる通路の総称のことです。

 

気とは、古代中国の哲学思想から生まれたもので、形のないエネルギーのことです。

また、気は生命活動の根幹エネルギーとも言われています。

 

血は、食品から摂取した栄養素を各組織に運びます。

解剖生理学で言う血液と似ていますが、生成や作用も違うことから血イコール血液とは言えません。

 

水(津液)は、唾液、胃液、涙、汗など身体の中の水液の総称です。水は全身に潤いを与え、体温や代謝を調整しています。

 

では、気血水の流れる経絡とはいったいどのようなものなのでしょうか。

 

経絡は経脈と絡脈の2つに分かれ、経脈は身体を縦に、絡脈は身体を横に流れる脈という意味をもっています。

経脈には十二経脈と奇径八脈があり、12本の経脈は陰陽で分類され、手足にそれぞれ三陽三陰の属する経脈が割り振られています。

また、陰経は「臓」に、陽経は「腑」に属しているとされています。

 

奇径八脈は、督脈(とくみゃく)、任脈(にんみゃく)、陰蹻脈(いんきょうみゃく)、陽蹻脈(ようきょうみゃく)、陰維脈(いんいみゃく)、陽維脈(よういみゃく)、衝脈(しょうみゃく)、帯脈(たいみゃく)の8脈からなります。

 

8脈のうち督脈と任脈には独自の経穴があります。

そのため、十二経脈とならんで十四径と言われることもあります。

 

このような経絡を通って気血は臓腑、筋肉、皮膚などを循環し、各機能の調整を行っています。

各臓腑にある気血も経路を通って循環しているため臓腑の気血に異常があれば、それが経絡上にあらわれることになります。

 

また、経絡上で気血の滞りがあれば、痛みや腫れ不快症状が発生します。

このように経絡が身体の内外を結んでいるため、身体内部の臓腑の異常を体表から把握をすることができるのです。

 

このような経絡の考え方は、指圧にも利用されています。

では次に、その指圧についてご紹介します。。

 

 

指圧の特色と手技について

 

指圧

 

指圧は手や指のみを使って施術します。

しかし、他の医療と決定的に違うのが、指圧では事前の診断がなくとも手指のみによる施術によって症状の緩和が期待されるということです。

 

なぜなら、指圧は「診断即治療」を可能にしているからです。

指圧では鋭敏な感覚器官である手を使って施術をしていることから、体表のコリの位置や状態を詳細に把握できます。

詳細を把握することで、その症状を見極めます。症状を見極めることで、そのまま治療に移行することができるのです。

ゆえに指圧では「診断即治療」が行えます。

 

また、指圧では押圧する際の原則として、「垂直の原則」「持続の原則」「集中の原則」があげられます。

 

「垂直の原則」は、対象部位に対してまっすぐに加圧していくことをいいます。

人体は平面ではないので、曲面に施術する場合には、まっすぐ圧が入るようにしなければなりません。

まっすぐ圧を入れることで、無駄な力の分散を防ぐことができます。

 

「持続の原則」は一定強度の圧を緩めずにそのまま一定時間持続させることをいいます。

一般人であれば、4~5kgの圧力で、3~5秒間3回が目安とされています。

 

「集中の原則」は施術するときには、精神を統一させて、患者の意識や状態に注意を払いながら適切な治療をおこなうという心構えを示したものです。

 

最後に指圧の手技について簡単にご紹介します。

 

 

通常圧法

 

一点を垂直圧で3~5秒押圧します。

 

 

衝圧法

 

次第に圧を加えていき、そこから、さらにもう一押しして、すぐに離すという手技です。

 

 

緩圧法

 

2段押し、3段押しともいわれる手技で、段階的に押圧していきます。

 

 

持続圧法

 

主として手掌を用いて押圧する手技です。

 

 

吸引圧法

 

手指と手掌を使用して皮膚に密着させ吸い上げる手技です。

 

 

 

まとめ

 

以上、東洋医学の経絡についての考え方や、あん摩、マッサージ、指圧の手技を中心に見てきました。

あん摩、マッサージ、指圧での手や指の使い方は様々で、かける圧の程度や時間を調整することで、様々な効果が期待されます。

 

その効果を症状に合わせて施術することにより、いわば、私たちの身体に合ったオーダーメイドの治療を行ってくれるのです。

 

東洋医学では病気が発症する前の段階、未病の段階で不具合に対処したり、身体が本来もっている自己治癒力を高めたりする治療を行ってくれます。

 

そうすることで、健康増進とともに病にかかりにくい身体を作るための一助になってくれるのではないでしょうか。

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