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新型コロナウイルスの治療薬 アビガン・レムデシビルの効果と安全性と清肺排毒湯
緊急事態宣言が5月末まで延長されることが決まりましたが、新型コロナウイルスに有効な治療薬が未だに定まっていないのが現状です。
有望な治療薬として、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」やエボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」が注目されていますが、承認段階で、副作用等の危険性も残っているようです。
感染の拡大を防いでいる近隣の中国・台湾・韓国では、漢方薬の「清肺排毒湯」が新型コロナ感染症治療のガイドラインに記され幅広く使われているようです。
今回は、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」がなぜ効果があるのか、また「レムデシビル」とはどんな薬なのか、漢方薬「清肺排毒湯」についてご説明します。
抗インフルエンザウイルス薬 アビガンについて
アビガンは、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が開発し、2014年に製造・販売の承認をえた抗インフルエンザウイルス薬で、一般に流通はしていない薬です。
現時点で国内に200万人分の備蓄を持ち、インフルエンザの治療薬として有名な「タミフル」などの既存のインフルエンザ治療薬が効かないような新型インフルエンザウイルスが流行した時に、投与できる治療薬です。
しかし新型コロナウイルスに有効な治療薬がないことから、患者の同意を取得した上で、医療機関の医師の医学的判断に基づき、アビガンを使用できるようになってきました。
日本医師会も4月28日の定例会見で、中国や日本国内でアビガンを早期投与した結果、症状の改善が認められていると指摘し、備蓄されているアビガンの投与を推進するよう要望しています。
ここで疑問がでてきます。
なぜ抗インフルエンザウイルス薬のアビガンが新型コロナウイルスに効果があるのでしょうか。
アビガンが新型コロナウイルスに有効な理由
まずインフルエンザウイルスについて簡単にご説明します。
インフルエンザウイルスについて
ウイルスの感染経路は2つで、飛沫感染と接触感染です。
①飛沫感染
感染者の「くしゃみや咳」と一緒に飛び出したインフルエンザウイルスを吸い込むことにより感染します。
②接触感染
感染者が手を触れたドアノブ、スイッチなどに触れることによりウイルスが手に付着し、さらにその手で目や鼻、口などに触れることで、その部位の粘膜から体内に入り感染します。
その結果インフルエンザウイルスは、鼻やのどの粘膜に付着(感染)した後、上気道と肺で増殖します。
インフルエンザウイルスの増殖のメカニズムは、
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インフルエンザウイルスは、人の粘膜に吸着して細胞内に侵入し、自身の膜を破って細胞中にウイルスの設計図であるRNA(リボ核酸)を放出。
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放出されたRNAが、細胞内でさらに新しいウイルスを生む複製がはじまる。
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複製されたウイルスが細胞の外に出て、他の細胞に感染を拡大。
1個のウイルスは8時間後に100個、16時間後に1万個、24時間後に100万個と爆発的に増殖すると言われています。
アビガンの効果とメリット
アビガンは、ウイルス増殖過程の「(2)複製」を助ける「ポリメラーゼ」と呼ばれる酵素の力を阻害しウイルスの増殖を阻止する薬です。
新型コロナウイルスもRNAの複製によって増殖するため、同様の阻害効果が期待されています。
アビガンのメリットは、レムデシベルと違い、条件付きではありますが、国の承認が既に得られている点です。
また日本で開発された治療薬で200万人分も備蓄されているという点です。
またここで疑問です。
なぜ日本で開発され、条件付きではありますが、日本医師会も投与を推奨し、200万人分の備蓄もあるアビガンがあるにもかかわらず、アメリカで開発され、臨床試験中のレムデシベルが急浮上してきたのでしょうか。
エボラ出血熱の治療薬 レムデシビルについて
レムデシビルは、米製薬大手のギリアド・サイエンシズが開発したエボラ出血熱の治療薬で、中国を視察した世界保健機関(WHO)の担当者が「現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言したことで、有望薬として一気に注目を集めました。
しかし、レムデシビルは開発中(臨床試験中)の新薬で、ウイルスに対する効果のメカニズムについて詳細はわかっていません。
また、イギリス紙フィナンシャル・タイムズ電子版が4月23日、レムデシビルの臨床試験を行った結果、症状改善などの効果がみられなかったと報じています。
アメリカでは、レムデシビルにより、新型コロナウイルス重症患者の2~4割が急性腎不全を引き起こしたとして大きな問題になっています。
ですが安倍晋三首相は4月27日、レムデシビルについて、「間もなく薬事承認が可能となる見込み」とし、承認の審査手続きを簡略化する「特例承認」により、保険適用で使えるようにする方針だそうです。
新型コロナウイルスはもちろん怖いですが、レムデシビルは本当に安全なのでしょうか。
副作用で急性腎不全患者が急増し、人工透析が必要となり、今度は人工透析用の機器や薬品が供給不足なんてことにならないように祈ります。
アビガンは妊娠中の女性が薬物を服用したときに胎児に奇形が起こる危険性がありますが、日本で開発され200万人分の備蓄がある、レムデシビルは開発中(臨床試験中)の新薬で、効果のメカニズムも詳しくわからず、その上副作用もある。
ここで疑問が出てきます。
欧米諸国より早く、新型コロナウイルスの対策に成功した中国・台湾・韓国が推奨している漢方薬「清肺排毒湯」(せいはいはいどくとう)は、なぜ日本であまり聞かれないのでしょうか。
漢方薬 清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)について
清肺排毒湯は、中国、台湾、韓国では新型コロナ感染症治療のガイドライン(中国国務院、大韓医学協会、台湾の国家中医学研究所)に新型コロナウイルスに使用すべき漢方薬として掲載されています。
中国、台湾、韓国では、軽症から重症の新型コロナウイルスの患者に幅広く使われ、治癒率は90%程度といわれ、台湾ではこの対策だけでないですが、感染者数はいまだ426人(4月23日現在)とごく少数で推移しています。
ではなぜ日本では清肺排毒湯はあまり聞かれないのでしょうか。
現状の日本では、ある日いきなり熱が出ても特に薬はなく新型コロナウイルスに怯えつつ何日かは自宅待機で様子をみなければなりません。
この様な時に、中国、台湾、韓国で新型コロナウイルスに一定の効果が見られた清肺排毒湯が手元にあれば少しは安心できるのではないでしょうか。
清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)
麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏を一緒に服用し代用します。
麻杏甘石湯
気管支を広げ、また痰を出しやすくして呼吸を楽にします。その作用から、ひどい咳や気管支喘息に適応します。
構成生薬は、麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)の4種類です。薬理的に重要な役割をする“麻黄”には、交感神経刺激薬のエフェドリン類が含まれます。この成分は、西洋医学の気管支拡張薬と同様の作用を示し、咳やゼイゼイする喘鳴をおさえます。そのほか、去痰作用のある“杏仁”、熱や腫れをしずめる“石膏”、緩和作用のある“甘草”などが配合されています。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
胃苓湯
食あたり、お腹のゴロゴロ、下痢、嘔吐、腹痛などを改善します。
構成生薬は、厚朴(コウボク)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、猪苓(チョレイ)
陳皮(チンピ)等、胃腸によいもの、あるいは無駄な水分を取り除く生薬がいろいろと配合されています。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
小柴胡湯加桔梗石膏
のどの炎症や痛みをやわらげ、また、そのようになりやすい体質を改善します。
構成生薬は、柴胡(サイコ)、黄ごん(オウゴン)、石膏(セッコウ)、桔梗(キキョウ)、半夏(ハンゲ)、人参(ニンジン)、 甘草(カンゾウ)等、“柴胡”と“黄ごん”、“石膏”の組み合わせにより、炎症をしずめる効果が高まります。“桔梗”は、去痰・排膿作用のある生薬です。また、“半夏”は胸のつかえ感や吐き気をおさえます。そのほか、滋養作用の“人参”、炎症や痛みを緩和する“甘草”などが配合されます。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
どの漢方薬も日本で処方可能です、お近くの漢方医もしくは漢方薬局にご相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は新型コロナウイルスの治療薬についてご紹介しました。
アビガンは一定の効果が認められていますが、一般には入手が不可能で簡単には投薬してもらえません。
レムデシビルは効果のメカニズムも詳しくわからず、その上副作用もあります。
それに比べ清肺排毒湯は、副作用も少なく安全で、新型コロナウイルスの対策に成功している国で幅広く使われています。
日本でも近隣国に見習って、新型コロナウイルスの治療薬として漢方薬が認知されることを期待します。