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生理痛を改善する鍼灸治療と冷えや自律神経を整えるツボ10選
生理痛は「女性なら誰もが経験するもの」、「他人に伝えにくい」等、我慢するしかないと思われてきましたが、今では生理痛を緩和する女性ホルモン薬や鎮痛薬も新たに開発されています。
また鍼灸治療も、国内外の研究で、自律神経系、内分泌系、免疫系等に作用し、気血の流れが改善し、生理痛に効果があると確認されてます。
今回は、生理痛と鍼灸治療についてご紹介します。
鍼灸治療をご紹介する前に、漢方(東洋医学)とは何かについて簡単にご紹介します。
漢方とは
漢方と漢方薬は同じ意味と思われがちですが、実はそうではありません。
漢方とは、鍼灸、漢方薬、養生、気功、整体、薬膳などを含んだ広い意味で使われます。
漢方の考え方に「気血水」という考え方があります。
「気血水」とは
気は、エネルギーのこと。生命活動の原動力となるものを指します。
血は、血液とその中に含まれる栄養素のことを指します。
水は、血液以外の体液。リンパ液や汗、鼻水なども含まれます。
私たちの体内では、それぞれが重要な役割を果たしており、「気血水」のバランスが崩れることで不調が生じると考えられています。
気は、人間の体を活動させる根本的な生命エネルギーのことで、いわば元気の素です。
「気」の異常には、「気虚」と「気滞」があり、「気虚」は、気が不足した状態で、「気滞」は、気の流れが滞った状態です。
気が異常になると、なんとなくだるい、疲れやすい、やる気が起きない、イライラ感、落ち込み、月経前症候群等の症状があらわれます。
「血」は、血液そのものに加え、血液が体じゅうに栄養分をめぐらせる働きを意味します。血の異常には、「お血」と「血虚」があり、女性多いのが特徴です。「お血」は、血の流れが滞った状態で、「血虚」は、血が不足した状態です。
「血」が異常になると、イライラ、不安、月経痛が強い、体の冷え、不眠、集中力低下、立ちくらみ、月経血が少ない等の症状があらわれます。
「水」は、リンパ液、消化液、唾液、汗など、血液以外の体液を指します。
水の異常には「水毒」があります。「水毒」とは、体の中に余分な水がたまった状態です。
「水」が異常になると、むくみ、めまい、吐気、頭痛等の症状があらわれます。
生理痛の原因とは
生理痛の原因は、痛み物質(プロスタグランジン)の量や食事や服装、喫煙等の生活習慣と様々ですが、その痛みの根本原因は、ストレスや自律神経、体の冷えが関係しています。
ストレスによって自律神経がバランスを崩し、交感神経ばかりが優位にはたらくと、血管が収縮し、血行が悪くなります。
血行が悪くなると冷えが起こります。
生理痛の原因は体の冷えです。
生理痛を改善するには、冷えの改善と同時に、自律神経の乱れを整える必要があります。
漢方では、
- 「気」の異常=ストレスや睡眠不足等によって起こる自律神経の乱れ
- 「血」の異常=血流の滞りや血が不足したことによる体の冷え
と考えています。
鍼灸治療は、「気」と「血」の異常を整える治療を行います。
次に、生理痛に効果的な鍼灸治療についてご紹介します。
生理痛と鍼灸治療について
前述の通り、生理痛の原因は、ストレスや自律神経、体の冷えが大きく関係しています。
生理痛を改善するには、自律神経の乱れを整えると治療と同時に、体の冷えを改善する治療が必要です。
ストレスや自律神経を整える鍼灸治療
生理痛は、ストレスからくる自律神経の乱れと大きく関係しています。
自律神経とは「交感神経」と「副交感神経」の2つに分けられ、この2つの神経がバランスをとりながら働いています。
活発に動くときや、緊張状態にあるときは交感神経が、休養時やリラックス状態にあるときは副交感神経がそれぞれ活発になります。
ストレスを受け続け、緊張状態が続くと、交感神経が優位になり続けてしまうため、副交感神経とのバランスも崩れてしまいます。
鍼灸治療では、優位になっている交感神経を正常に戻し、副交感神経の活動をサポートする効果があります。
実際の治療方法としては、自律神経反射という反応を使い、脳に働きかけ、自律神経のバランスを整えます。
人の身体は、身体の表面に刺激を加えると、感覚や感情が起こり、同時に反射反応が起きるようになっています。
鍼灸刺激も刺激の一つですので、鍼灸治療を受けることにより、反射反応が起きます。
人間の体には、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みが備わっています。
鍼で刺激することで、刺激情報が脊髄を通り脳に伝わります。
伝わる場所は、脳の生命と関係する脳幹や、自律神経と関係する視床下部、扁桃体などを含む大脳辺縁系で、鍼刺激を受けた脳幹からは、ドーパミン、GABAなどの分泌がされ、活発となった交感神経が抑制され、落ち着きがでるようになるとされています。
また、大脳辺縁系からストレスを緩和するセロトニン、やる気を出すノルアドレナリン、痛みを止めるβ―エンドルフィンなどの物質が放出されることが分かっています。
鍼灸治療により、これらの物質が放出されることで、自律神経の乱れが改善し、生理痛の緩和、生理周期の安定化・ホルモンバランスを整える等の改善が期待できます。
また、鍼灸治療は脳血流量を増やすことが知られています。
脳血流量が増えることにより、自律神経に酸素を与えることで緊張感を緩めることができます。
この作用により、興奮している交感神経に働きかけ、その興奮を抑え、自律神経の乱れを整える効果が期待できます。
次に、自律神経を整える効果のあるツボについてご紹介します。
①百会(ひゃくえ)
百会というツボは、頭のてっぺんにあるツボで、全身にある経絡が交わるところで、全ての臓器と繋がっているとされています。そのため全身的に自律神経のバランスを整え、活性化してくれます。
ツボの押し方
両手の中指を重ねて、まずは垂直にまっすぐ30秒ほど指圧します。 そして、押したまま指を5~10mmの範囲でずらし、さらに30秒から1分指圧します。
②内関(ないかん)
内関は、手の平側で、手首のシワから指4本分上に位置するツボで、自律神経失調症の中でも、うつ症状、不眠症、車酔い、あがり症などの症状によく使われています。
内関を刺激することで精神安定をもたらし、普段から冷静さを保てるようになります。また、百会と合わせて使用することで相乗効果が生まれます。
ツボの押し方
親指で3~5秒間やや強めに指圧し、5~10回繰り返します。
③身柱(しんちゅう)
身柱は、肩甲骨の間、背骨の中央部に位置するツボで、子供の夜泣きやかんむし、ヒステリー、うつ病をはじめとした精神的な症状が強い時に効果のあるツボです。
身柱は、自分ではなかなか触ることができないツボですが、寒い冬や、真夏に冷房で冷えすぎた室内にいる時には、この部分にホッカイロをあてたり、ベストのような服を重ねたりして温めてあげる、もしくは冷やさないようにしてあげると自律神経の乱れが緩和されます。
ツボの押し方
人差し指と特に中指で少しずつ力を入れて指圧します。
④中脘(ちゅうかん)
中脘は、みぞおちとおへそを結んだ線の中央に位置するツボで、本来は、胃腸の調子を整えてくれるツボです。
そのため、体質的に胃腸の調子が崩れ自律神経が乱れやすい方、食欲不振がある方などに効果があり、胃腸の働きを整え、消化を助けてあげることで自律神経のバランスを正常な状態へ戻してくれます。
ツボの押し方
なか指を重ね合ってひと押し10秒ほどを軽く3~5回、繰り返します。
体の冷えに効果的な鍼灸治療
生理痛は、体の冷えと大きく関係してることは前述の通りですが、その冷えに骨盤の歪みが関係しています。
骨盤に歪みがあると周辺の筋肉に負担がかかり、凝り固まることで血流が悪くなり、体が冷えてしまいます。
体が冷えると骨盤内の血行が悪くなり、生理時の経血が流れ出にくくなります。
この流れにくくなった経血を、無理やり押し出そうと子宮が収縮することで、さらに痛みが大きくなります。
骨盤は生理の時期に最もゆるみ、生理が終わると、自然に引き締まるような仕組みになっています。
骨格が歪むと骨盤内の子宮や卵巣もゆがんだ状態となり、様々な不調が起こってしまいます。
その骨盤が歪む原因の多くは、不自然な姿勢です。
座っているときに足を組む姿勢は、骨盤の歪みに大きく影響します。
また立って腕組みをするのも、背骨が曲がり、さらにお腹も出る姿勢になるため、骨盤を歪ませる姿勢です。
仕事や勉強、スポーツなどで体の軸が歪んでいないか、普段から気をつけるようにするとともに、鍼灸治療で体の経穴(ツボ)や経絡を刺激して骨盤を正常な位置にキープすることが冷えの解消となり、生理痛の改善につながります。
次に、自律神経を整える効果のあるツボについてご紹介します。
①三陰交(さんいんこう)
冷えトラブルに万能なツボです。
足の内側にあります。くるぶしの骨の一番上から指4本分上、すねの骨のすぐ後ろです。押したときに、軽い痛みを感じるところがツボです。
ツボの押し方
左右の親指を重ねて、少し痛いぐらいに押します。息を吐きながら数秒押し、1回3~5秒ぐらいを目安にし、1カ所につき3~5回ほど繰り返してください。
②八風(はっぷう)
足の指の付け根にある、冷えに効果的なツボです。
足の甲側と足の裏側の両方の、足の親指から小指までの各付け根の間です。左右合わせると、合計8つあるので「八風」と言われています。
ツボの押し方
親指と人差し指でツボをはさむように、足を上下につまんで強めに押すようにもみます。指先に向かって引っぱった後に離してください。1カ所につき10回程度行います。足の裏側から各指の間に手の指を差し込み、そのまま足首をぐるぐると回すと、一度にすべての「八風」を刺激することもできます。
③湧泉(ゆうせん)
血行を良くする、下半身の冷えに効果的なツボです。
足の裏の親指と人差し指の付け根からのふくらみと、中指と薬指と小指の付け根からのふくらみが交わるところです。押すと圧痛があります。
ツボの押し方
両手の親指の腹で、強めに数秒押す、数秒ゆるめる。これを3回程度繰り返しましょう。
④関元(かんげん)
冷えやすいおなかの温めに効果的なツボです。
おへその下、指4本分真下にあります。
ツボの押し方
「関元」を中心にカイロを当てます。カイロを使用しないときは、「関元」に中指の腹を当て、ゆっくり軽く5秒ぐらい押してゆるめる、これを10回程度繰り返すとよいでしょう。
⑤風門(ふうもん)
全身を冷やさないための首の付け根のツボです。
首を前に倒したときに出っ張る骨から指2本分下の、背骨から指2本分外側の左右2点にあり、「風邪(ふうじゃ)=かぜの邪」が入り込む場所と言われています。
ツボの押し方
「風門」を中心にカイロを当てます。カイロを使用しないときは、中指で5秒ぐらい押してゆるめる動作を繰り返してください。首を前に倒し、両腕を首より上にあげるようにすると押しやすくなります。
⑥曲池(きょくち)
気づいたときに刺激できる腕のツボです。
ひじを軽く曲げたときにできるしわの親指寄りのところにあります。。
ツボの押し方
手首には太い動脈があり、この腕の内側のツボを温めると、手先だけでなく、全身の血行が良くなります。服の上からカイロを当ててみてください。腕を出さないようにするのも温める方法の一つです。
まとめ
今回は、生理痛と鍼灸治療についてご紹介しました。
生理痛は「女性なら誰もが経験するもの」、「他人に伝えにくい」等、我慢するしかないと思われてきましたが、今では生理痛を改善する投薬や鍼灸治療等、緩和する方法はたくさんあります。
また予防方法もたくさんあります。
我慢しないで、「自分の体は自分で守る」という意識が大切です。
普段から経血の観察などで生理痛との関係をチェックしたり、生活習慣を見直し、体を冷やさない工夫を暮らしに取り入れるようにしましょう。