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肩甲骨のコリに効果的な漢方薬と日常生活の改善について
肩甲骨のコリは、同じ姿勢をとり続けた結果おきる、筋肉の硬直や血流の滞り、末梢神経の損傷などが原因です。
私達のからだの中を流れる血液は、およそ1分間のうちに身体中を巡回し、老廃物を体外に排出しながら、酸素などの栄養素を全身に届ける役割を担っています。
しかし、様々な影響を受け、血流が滞り、血行不良になると、いろいろな身体の不調がでてきます。その不調の一つに、「肩コリ」や「肩甲骨のコリ」があります。
肩コリや肩甲骨のコリは、筋肉がこわばることで、肩から背中にかけて、感じる不快な症状の状態をいいます。
その原因の1つが血行不良で、筋肉に沿って流れる血液の流れが滞ることで筋肉の老廃物が蓄積し、血管が圧迫され、痛みや筋緊張感といった肩コリの諸症状をもたらします。
肩コリや肩甲骨のコリの症状は、痛みの度合いや部位によって異なりますが、いずれにしても滞った血液の流れを良くする事でコリの症状は緩和されます。
今回は、血流改善、筋肉の緊張を緩める漢方薬、ストレッチ等による血流改善、血行不良の原因となった日常生活の改善についてご紹介します。
ですがその前に、肩甲骨のコリについてもう少し詳しく紹介します。
肩甲骨のコリと改善策について
肩甲骨とは、背面部から肋骨を覆っている、一対の三角形状をした大型の骨のことですが、この肩甲骨のコリがひどい人は、肩甲骨が肋骨に癒着したような状態になっています。
肩甲骨のコリは、下半身の硬さでわかります。
開脚をして体を前に倒すとき、内モモや膝裏、ふくらはぎが硬直して痛い場合は肩や肩甲骨もかなりこっています。
また、壁を背にして立ち両腕を真っ直ぐ上げて違和感があるようなら、やはり肩甲骨まわりがこっています。
正常な肩甲骨は、背中の上部にあって自由に動くものですが、長時間のデスクワークやパソコン作業などが続くと、猫背の姿勢になってしまいます。
その結果、内臓が圧迫され、深い呼吸もできないため体に様々な不調がおきてしまいます。
次に肩甲骨のコリに効果的な漢方薬3選をご紹介します。
肩甲骨のコリに効く漢方薬3選
漢方薬には、血流改善、筋肉の緊張を緩める効果があります。
今回は、特に肩コリや肩甲骨のコリに効果的な漢方薬3選をご紹介します。
どの漢方薬も市販薬として薬局等で手に入りますが、体質に合わない漢方薬を用いると副作用をおこすこともあります。
お近くの薬局や漢方医師に相談し、自分の体質にあったものを選ぶようにしましょう。
桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)
効果
滞った血液のめぐりを良くする効果があり、肩コリや冷え症、頭重感などに処方されます。
配合されている生薬
桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、桃仁(とうにん)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんび)です。
葛根湯(かっこんとう)
効果
風邪薬として用いられることが多いですが、体の熱や腫れ、あるいは痛みを発散させる効果があることから、肩コリの治療にも処方されます。また、頭痛や筋肉痛にも効きます。
配合されている生薬
葛根(かっこん)、大棗(たいそう)、麻黄(まおう)、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)です。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
効果
体の熱をさまし、病因を発散させるような働きや、体の水分循環を改善する効果があり、肩コリやのぼせ、むくみ、便秘などに処方されます。
配合されている生薬
黄芩(おうごん)、川芎(せんきゅう)、甘草(かんぞう)、当帰(とうき)、桔梗(ききょう)、薄荷(はっか)、石膏(せっこう)、防風(ぼうふう)、白朮(びゃくじゅつ)、麻黄(まおう)、大黄(だいおう)、連翹(れんぎょう)、荊芥(けいがい)、生姜(しょうきょう)、山梔子(さんしし)、滑石(かっせき)、芍薬(しゃくやく)、無水芒硝(むすいぼうしょう)です。
次に肩甲骨のコリに効果的なストレッチをご紹介します。
肩甲骨のコリを改善するストレッチ 「肩甲骨はがし」
肩甲骨まわりの筋肉の緊張をゆるめるには、入浴後などの身体がゆるんだときに腕を背中側に回し、右手を上から、左手を下から持ってきて、背中で手を組みます。反対側も同じようにおこないます。手が届かない場合はタオルなどを用いておこないます。
また、こっている部分を片方の指先の腹で押さえて、腕をグルグルと大きく回します。癒着した部分が少しずつはがれてくると、腕が徐々に大きく回るようになります。
次に日常生活上でおこる肩甲骨のコリの原因と対処法をご紹介します。
日常生活上の原因と対処法
日常生活上の習慣などが原因で、肩甲骨のコリは起こります。
PC・スマホの使いすぎ
PCやスマホを使っているときは、どうしてもうつむいた姿勢になりがちです。このため首の後ろから肩にかけての筋肉がこわばり、ときには肩甲骨の痛みを感じる場合もあるといわれています。
PCやスマホを使うときは、適宜休憩をはさむなど、同じ姿勢が長時間に渡って続かないようにしましょう。休憩時間にはストレッチなどをして、できるだけ体を動かすようにすることが好ましいです。
運動不足
筋肉は血流を促すポンプのような役割を担っています。運動不足によって起こる筋力の低下や、動かさないことによる筋肉の緊張は痛みの原因となることがあります。
運動不足を解消するために、毎日の生活の中で、継続的に行える運動を取り入れるようにしましょう。全身を使うストレッチなど、首や肩・背中の筋肉をよく動かすことがポイントです。
ストレス・緊張
過度のストレスや緊張は筋肉の緊張を招き、長く続くことで痛みにつながることがあります。
ストレスを緩和させるには、上手な気分転換やストレス解消方法を見つけましょう。スポーツや趣味など楽しめることを持つことはもちろん、自分がストレスや緊張を感じやすいシチュエーションを把握し対策を立てておくなども大切です。
漢方薬やストレッチ、マッサージ、日常生活の中で行える対処法を試しても、痛みがよくならない場合には、血行不良が原因でない、思いもよらない原因や病気が隠れていることも考えられます。一度病院で相談してみましょう。
血行不良が原因でない肩甲骨の痛みについて
肩甲骨の痛みは肩コリなどが原因と思われがちですが、病気が原因となって起こっていることもあるため注意が必要です。
スマホを使うようになってから肩甲骨のあたりが痛む
肩甲骨の痛みに加えて手のしびれがある
左右どちらかの肩甲骨だけが痛み、続いている
このような症状がみられる場合、単なる血行不良によるコリ以外の病気が潜んでいるかもしれません。
肩甲骨は骨や関節の病気や、場合によっては体の病気によって引き起こされることがあります。
肩甲骨の痛みの原因となる骨や関節の病気
肩甲骨を痛くする骨や関節の病気としては次のようなものがあります。
胸郭出口症候群
首から出た神経は腕神経叢という神経の束となり腕へと続いていきます。腕へつながる神経が通るスペースには太い血管、筋肉、骨が密集しているため、体格や生まれつきの構造によっては神経が刺激されてしまい、首・肩・腕の痛みやしびれが起こります。この状態を胸郭出口症候群といいます。胸郭出口症候群には鎖骨のあたりが狭くなって神経・血管が圧迫されて起こるタイプと、なで肩体型のために腕に行く神経が下の方に引っ張られて起こるタイプがあります。
つり革をつかむ・洗濯ものを干すといった、腕をあげる動作の際に痛みが悪化することもあります。
頚椎椎間板ヘルニア
首の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、あるべき位置からずれて飛び出してしまう病気です。飛び出した椎間板が神経を圧迫すると、肩甲骨や首の後、肩、腕などに痛みやしびれなどの症状が現れます。20~30代の若年層に多いといわれています。
頚椎後縦靭帯骨化症
頚椎の後ろにある靭帯(後縦靭帯)が骨化する病気です。神経が圧迫されることで肩甲骨の痛みの他、手足のしびれ、細かい動きができないなどの症状が現れます。少しずつ症状が進行していくことが特徴です。
時には内臓の病気が原因で肩甲骨の痛みが現れることもあります。
特に注意が必要な病気には、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、胆石、胆のう炎、膵炎などの病気があります。
いずれも、突然もしくは繰り返すみぞおちや脇腹の強い痛みが特徴です。痛みが突然で、しかも激しい場合には速やかに受診しましょう。
まとめ
今回は、肩甲骨のコリの原因や改善策についてご紹介しました。
肩甲骨のコリを漢方医学で診ると、血のめぐりが悪くなった状態です。
血のめぐりが悪くなると、肩甲骨や肩のコリだけでなく、腰痛や筋肉痛の原因にもなります。そればかりか、目の下のクマやシミも血のめぐりが原因です。
コリや痛みが「養生をしなさいよ」と教えてくれているのです。
私たちの身体には、ありがたいことに自然治癒力が備わっています。
その自然治癒力を最大限に活かすためにも、体の不調に気付いたら養生をすることが大切です。